夜店の灯波郷ひと山値切りたり
脱線したついでにもう一つ。これも発表する機会がないまま放っておいた俳句写真。そろそろ賞味期限が切れてしまうので、掲載することにする。
これは、先月初めに、都心の駅前商店街の祭りの夜に、マンガや雑誌などを売っていた露店の古本屋(というかフリマのような店)で買った石田波郷全集だ。
会社の帰りに何気なく夜店をのぞいていて見つけたもの。夜店の並びのはずれにあった古本屋。夜の7時過ぎなのに、もう店じまいを始めている。その段ボールなどが積んである地べたに、無造作に積み重ねてあった。
値段も書いてなくて、汚らしい。しかし間違いなく角川書店の石田波郷全集全九巻、すべて揃っている。
買う気はなかったが、いくらぐらいかと思って聞いてみると一万円だという。まあまあ、予想される値段だが、こんなに汚れているのに高いのではないかと突っ込むと、いくらだったら買うかと返してきた。まずい、ちょっと深入りしすぎたかと思ったが、「五千円」と冗談言うと、よし、持って行っていいよ、と言われてしまった。引っ込みがつかない。
安いような高いような、得したような、無駄遣いしたような気持で、買ってしまい、家に帰って調べて見ると、箱は焼けて変色しているものの、中はほとんど見ていないのではないかと思われるほどきれいだ。帯も月報もすべて揃っている。これが五千円だったら儲けものだ。
というわけで、今も私の机の上にでんと一山置いてある。読もう読もうと思いながら、まだ一ページも読んでいない。こういう本は、電車の中で読むには不向きなのだ。
夜店にて波郷全集五千円
ちょっと中途半端。何を言いたいのかわからない。
夜店にて波郷ひと山五千円
おもしろくなってきた。現代俳句の大御所で人気者の波郷大先生を「ひと山」扱いしたところがいい。
「夜店にて」が説明的で安易か。「五千円」もちょっと品がないなあ。
夜店の灯波郷ひと山値切りたり
面白みがなくなったか?それにしても「波郷ひと山」が効いている。効いている言葉が一つあれば、あとは平凡に言った方がいい時もある。