<< 秋の海/沖を走る雨 | main | 秋の海/秋日落つ >>

秋の海/たゆたう浮子

たゆたう浮子

波止さやかたゆたふ浮子の白昼夢

岩井袋港は小さな港で、漁に出ているからかもしれないが、大きな船はほとんどなく、たまに船外機を付けた小舟が出入りするだけだ。かつては船着場だったと思われる防波堤はところどころ崩れて、そこに船が繋留されているとはとても思えない。いかにも寂れた漁村という感じがする。
地元の人は全く見かけず、釣り人が港の周りに数人、遠くの岩場に数人見えるだけだ。
その防波堤の突端に座り込んで釣り糸を垂れる。何が釣れるのかわからないし、特に何かを積極的に釣ろうという気持ちもないので、港に来る途中で買ってきた針と餌を付けて、適当な場所に投げ込む。
爽やかな風が陸から海に向かって吹いている。空は高曇り、鳶が数羽、頭上を舞っていて、ときどきするどい鳴き声をあげる。
ウキをじっと見ていると、自分の座っている岸壁が動いているのではないかと感じるときがある。また、アタリがあったわけでもないのに、なぜか突然ウキが見えなくなることがある。
たまに、ふっとウキが引き込まれる時があるが、うまく合わせられない。餌をつけ直してまた振り込む。たまには釣れることもあって、少し興奮。そんなことを一日中繰り返している。
その間、何を考えているかと言うと、おそらく何も考えていない。時間はいくらでもあるし、眺めもいいのだから、俳句の一つや二つ作れそうなのだが、そんなことは思いもしないのだ。
退屈とか、時間をもてあますなどと言うこともない。時間が止まっているというか、時間と言う観念がまったくないと言った方がいいだろう。

釣果はというと、これがなかなかのもの。十四五センチのウミタナゴ六枚に二十センチほどのメジナ一枚。

釣果

ちょうどいい釣果日暮れて波止や秋

獲物の種類も、数も大きさも、どことなくちょうどいい。





コメント
こんばんは。
淡々と書かれている文章から、心情がにじみ出ています。
無欲の勝利・・と言うか、釣果ですね。
何も釣れなくて、魚屋さんで買って帰る人もいますのに。

瀬戸内の生まれですので、思う事があると潮鳴りを見に出かけていました。
海はいいですね・・地球の果てから波を運んでくれます。
お返事はよろしいですよ・・大事になさってください。
  • ゆずりは
  • 2009/09/30 7:47 PM
こんにちは。”たゆたう”という言葉と波の写真がとてもぴったりとしていて好きです。
 
 波を見ていて時間の観念がなくなる様子が、伝わってきます。

 きっと何も考えていない、無の心境になったときなのだろうと、想像をしますが、、、

 あるがままでいられる人の姿かもしれません。



 
  • しろくま
  • 2009/10/03 10:13 PM
ゆずりはさん、こんにちは。

海はいいですよね。
特に、子供の頃自転車で磯釣りに行った庄内の海は最高でした。
早朝、四時頃に家を出て、ふうふう言いながら山を登ってトンネルを抜けると、目の前に海が広がり、潮の匂いがプ〜ンと鼻をついてきます。その頃になってようやく空も明るくなりはじめ、もう、わくわくして、猛スピードで坂を下ったものです。
  • 無一
  • 2009/10/05 5:48 PM
しろくまさん、こんにちは。

理想は「あるがまま」ですが、
「あるがまま」に生きていくことは、なかなか難しいようです。
見栄を張り、謙遜し、たてまえと本音を使い分けながら、渡らなければならない世の中なんですねえ。
この歳になっても、まだ、あるがままとはいきません。
  • 無一
  • 2009/10/05 5:58 PM
コメントする









この記事のトラックバックURL
トラックバック
calendar
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     
<< September 2019 >>
selected entries
categories
archives
recent comment
                
links
profile
search this site.
others